便潜血検査とは
大腸がん検診で行われる検査として一番代表的な検査です。大腸がんは進行すると、便通異常(便秘、粘液性の下痢、便が細くなる)、血便、貧血などの症状を引き起こします。しかし早期の大腸がんはほぼ無症状です。
大腸がんは表面が正常の腸管粘膜と異なり傷つきやすい組織であり、少しずつ出血しています。目には見えないほどの、わずかな血液が便の中に混じっていないかをチェックするのがこの便潜血検査です。
便潜血検査は、1日法(1日だけ提出)よりも2日法(2日間分出す)のほうが、検査陽性の時の癌の検出率(感度)が高いといわれています。さらに、2年に1回より毎年施行したほうが、大腸がんの抑制効果が高いと報告されています。
便の採取や提出は多少手間がかかるものですが、40歳以上の方は、毎年受けることをお勧めします。
※余談ですが、便潜血の検査の棒は、便をこするためのもので、肛門に入れるものではありません。
便潜血検査で陽性と
指摘された方へ
まずここでお伝えしたい一番重要なことは、「便潜血陽性と言われた場合は、必ず大腸カメラを受けていただきたい」ということです。2回のうち1回陽性でもです。痔ががあるからとか、あのとき便秘だったから、もう1回やり直させて欲しいと言う人もいますが、それでも陽性は陽性です。
便潜血陽性とは、消化管から何らかの出血があるということです。「便潜血陽性=大腸がんがある」という診断ではありません。消化管から出血を起こす病気は痔核や大腸ポリープ、大腸の炎症などがあり、大腸カメラを行っても「異常なし」となることもあります。
とはいえ、便潜血陽性をきっかけに大腸カメラをすれば、結果的に大腸がんの死亡率が下がることが証明されています。
大腸がんについて
大腸がんになる患者さんの数は継続して増え続けています。さらに死亡数も同様にずっと増え続けています。2020年の国立がん研究センターの統計によれば、男性では罹患数・死亡数で3位、女性では罹患数2位・死亡数1位です。男女合計では肺がんに次いで日本人を苦しめているがんなのです。
原因は、食事内容の変化(肉を多く食べ野菜が少ない)、アルコール摂取、喫煙など指摘されていますが、忘れてはならないのが遺伝的要因です。大腸がんの家族歴がある場合は、2~4倍の発症リスクがあるという報告があります。
前述のように、大腸がんで症状が出る場合はかなり進行していることが多く、「症状がない=検査しなくていい」と考えるのはお勧めしません。きちんと便潜血検査(2日法)を毎年行い、陽性ならば大腸カメラを行う、陰性でも気になる症状がある場合は大腸カメラを行いましょう。
便潜血検査陰性の方へ
早期大腸がんの50%、進行大腸がんの10%程度は便潜血検査が陰性であったと報告があります。つまり、「便潜血陰性=大腸がんがない」ではありません。これは大腸がんがあったとしても、その部位の便が液状や軟便の場合は出血が起こりにくいことが原因とされます。
便潜血検査が陰性であれば、進行大腸がんである可能性はかなり低いとはいえるでしょう。
しかし、大腸ポリープは便潜血陽性にはほぼならないといわれています。大腸がんは大腸ポリープから発生することがほとんどであり、早期にポリープを切除することで、大腸がんのリスクを減らすことが可能です。
便潜血陰性でも、何か気になる症状がある、もしくは大腸がんリスクの上がる40歳を超えたら、一度は大腸カメラを行うようにお勧めしています。
苦しくない大腸カメラ検査
大腸カメラのハードルを下げることは消化器内科医の務めだと考えています。
最新の内視鏡機器は随所に工夫がされており、カメラ挿入時の患者さんへの負担を減らすように設計されています。腸管内に送る空気は、炭酸ガス)で、室内気を送るよりも体内に吸収されやすく、検査中・検査後のおなかの張りを軽減します。
当日の車やバイク・自転車の運転をされない場合は、鎮静剤・鎮痛剤の使用が可能です。これにより、ウトウトと眠ったまま検査を受けられます。鎮静剤を使用する際は、体の酸素飽和度や血圧などのチェックを徹底し、安全性の高い検査になるよう努めています。
大腸ポリープ切除
検査途中で大腸ポリープや早期大腸がんを見つけた際は、すぐその場で切除します(日帰り手術)。入院が要らないので、切除が終わってから直ぐに帰宅することが可能です。大腸ポリープの早期切除は、将来の大腸がんの予防として有効です。検査を受けながら切除できるので、事前の食事制限なども一回で済み、経済的にも時間的にも負担が軽減されます。