手首や手の痛み

手や手首の痛みとは

細やかな動きができる手や手首は、普段から酷使されやすい部位です。裁縫やパソコンのキーボード操作など、指先をよく使う細かな作業を長時間続けていくと、手が痺れたり筋肉がこわばったりするようになります。
加齢に伴って手や手首の筋力が低下すると、変形といった問題も起こりやすくなります。手は身体の中で、酷使されやすい部位です。そのため異常がみられた時の、初期治療が非常に重要になります。正しいリハビリテーションを行い、きちんと回復させることが大切です。

手の骨のメカニズム

手首から指先までの間には関節がたくさんあり、筋肉や腱、靱帯、神経などが複雑に絡んでいます。特に、指を曲げたり伸ばしたりする腱の周辺には、スムーズな動きを行うための組織である「腱鞘(けんしょう)」が、腱を覆うように存在しています。実際に指を動かしてみると、骨と腱と一緒に腱鞘も動きます。
この腱鞘の滑りが悪くなったり摩擦を起こしたりすると、腱鞘炎を発症しやすくなります。

主な症状

  • 手や手首が腫れている
  • 手や手指が痺れている
  • 手首や指を動かす時、痛みが走った
  • 指を動かした時、中でひっかかるような感じがした

など

手に異常を生じる原因

外傷によるもの

手首や指の骨折、突き指などの怪我が原因になります。

腱鞘炎

手首や指にとって負荷の大きい姿勢を長時間とりつづけると、指を動かす腱や腱鞘部に炎症が起こりやすくなります。

骨の変形

骨折や怪我などで骨が正しく治癒しなかったことで変形が生じます。加齢も変形の要因になり、痛みや動きの不良などのトラブルが起こりやすくなります。

ガングリオン

関節包(関節を包む組織)や腱鞘部に変性が起こった結果、ゼリー状の物質が詰まっている袋状の腫瘤(しこり)が生じる疾患です。

代表的な疾患

橈骨遠位端骨折

手首部分の骨が折れてしまう骨折です。転んだ時に手を強くついたことをきっかけに、発症するケースが多い骨折です。骨折したところが変形したまま治ってしまうと、将来の生活に悪影響を及ぼしてしまいます。特に、高齢の方や骨粗鬆症が進行した方は、橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)が起こりやすいので要注意です。
骨が大きくズレている場合は、手術が選択されます。治療が終わった後は、手首の拘縮(こうしゅく:関節が硬くなる状態)や可動域制限(動かせる範囲が狭くなる状態)が残りやすくなるため、適切なリハビリテーションを続ける必要があります。当院では理学療法士の指導を受けながら、患者様一人ひとりの状態に合った治療プランを作成し、丁寧なリハビリテーションを提供しています。

舟状骨骨折

手首には小さな骨が多く集まっており、骨折しても、腫れや痛みといった自覚症状が目立たないこともよくあります。「「軽い捻挫かな?」と思っていた怪我が実は骨折で、気付かないまま放置してしまった」というケースも決して、珍しくありません。
正しく治癒されないと「偽関節」ができ、強く痛んだり手首の変形(変形性関節症)が将来起こってしまったりするリスクを伴います。変形がひどくなると手首が動かしにくくなったり、力が入りづらくなったりします。

マレット指

突き指をきっかけに発症するケースが多い疾患です。指には、「曲げる腱」と「伸ばす腱」があります。この2つの腱がスムーズに連動をとることで、私たちは指の曲げ伸ばしができます。しかし、指を伸ばしたまま指先を強くつくと、第一関節にある「伸ばす腱」が断裂する「腱性マレット」が起こったり、骨と腱の付着した部分が剥がれる「骨性マレット」を生じたりすることがあります。
どちらも、指を伸ばす機能に影響を与えてしまうため、装具を用いた治療で治す必要があります。特に、骨性マレットの場合は、剥がれた骨片の大きさによっては、手術を余儀なくされる可能性もあります。

ばね指(弾発指)

指のオーバーユースによる腱鞘炎で、指を曲げ伸ばしした時の痛みや、ばねのように跳ね返ったり引っかかったりするなどの症状が現れます。腱鞘炎が長期化すると腱そのものが腫れてしまうため、腱鞘(腱が通過するトンネル)を通る際、引っかかるようになります。初期のうちに安静を中心とした保存的治療を行えば、比較的早く回復できます。しかし、ある程度進行すると最悪の場合、指が曲がり切ってしまい伸びなくなります。
特にキーボードの操作や編み物、ピアノ、物を強く握る動きなどを長時間繰り返していくと、発症しやすくなります。糖尿病を発症している方や中年期の女性に多い傾向があります。再発リスクも高いので、適切なケアできちんと治すことが重要です。重度まで進行すると、手術でないと治せなくなります。

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手根管症候群

手の平側の手首の内部には、骨や靱帯で囲まれた小さなトンネルである「手根管」が存在します。手根管の内部には、指を曲げるための腱がたくさん通っています。そして「正中神経」という、手の働きで重要な働きをしている神経が通っています。
手根管の中で炎症が起きると腱や周囲の組織がむくみ、手根管内を通る正中神経が圧迫され、症状が起こります。
発症すると親指や人差し指、中指に痺れが起こりやすくなりますが、進行すると、親指のつけ根のふくらみ(母指球筋)が痩せて萎縮し、そこから徐々に親指が動かしにくくなります。普段から手をよく使う作業をされている方はもちろん、妊娠中の方や更年期の女性、透析治療を受けられている方などは、発症リスクが高い傾向にあります。
治療では安静を中心とし、必要に応じて消炎鎮痛剤投与やステロイド注射などを行い、改善を目指します。重度の方には手術を選択します。

ドケルバン病

手首の親指側を通っている腱に炎症が生じ、腫れを起こしてしまう疾患です。指や手首を頻繁に曲げ伸ばしすることが原因とされています。特に、親指の曲げ伸ばしをした際に、痛みやひっかかりを感じるのが特徴です。親指をよく使う作業を頻繁にされている方や、授乳などで赤ちゃんの頭を手首で支える機会が多いお母さんなどは、発症しやすい傾向にあります。

母指CM関節症

CM関節とは、親指のつけ根部分に存在する関節です。CM関節は手の中でも酷使されやすく、負担のかかりやすい部位でもありますので、変形も起こりやすく、特に「ビンの蓋を開ける」「物をつまむ」といった動きを行った時に痛みが起こる特徴があります。
本来、指は「物を持つ」「握る」などの動きをとった時、親指は人差し指から小指までの4本の指で握る力を全部受け止めますので、親指は大きな負荷がかかりやすい部位です。特に、CM関節には強い負荷がかかるため、軟骨が摩耗しやすく、骨同士がぶつかり合ったり靭帯が緩みやすくなったりしますので、関節がズレやすくなります。
治療では安静を第一にしながら、親指を固定するサポーターや注射剤を使った治療を行うことが多いです。重度の変形や激痛を伴っている場合は、手術が余儀なくされます。

ヘバーデン結節・ブシャール結節

両方とも、指の関節部が急に変形してしまう疾患です。第一関節(DIP関節)の変形を「ヘバーデン結節」、第二関節(PIP関節)の変形を「ブシャール結節」といいます。原因は残念ながら、いまだにはっきりと分かっていません。しかし、加齢やホルモン、指の酷使による影響で発症するのではないかと考えられています。関節部分の軟骨が擦り減ることで急に腫れます。その際に無いはずの骨が生じたり、指の骨が傾くような変形が起こったりするのが特徴です。
発症者は中年期の女性に多く、痛みだけでなく見た目が気になって受診される方も少なくありません。

関節リウマチ

免疫機能の異常が原因で、関節の組織に炎症が起こってしまった結果、関節が変形してしまう疾患です。自己免疫疾患の一種とされており、発症すると手や足の関節部分に腫れや痛みを起こしやすくなります。30~40代の女性に多くみられ、放置しておくと骨や軟骨が壊されてしまい、関節に変形が生じます。これらの症状によって、日常生活に大きな悪影響を及ぼすこともあります。

ガングリオン

関節包や腱鞘の上に、ゼリー状の嚢胞性病変(できもの)ができる疾患です。原因ははっきりと分かっていませんが、女性に多くみられる傾向があります。
大きい場合や痛みがある場合、神経を圧迫している場合は、穿刺吸引処置や手術治療が選択されます。

診断

レントゲン

X線を使って骨折や骨周りに異常がないかをチェックしていきます。

超音波検査

超音波を用いて、腱の炎症の有無などを調べていきます。

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治療

症状や重症度によって治療内容を変えていきます。

安静にすること

変性疾患による炎症や痛みがある場合は手や手首に負担をかける作業をできる限り、避けていただきます。まずは安静を最優先にして、手を労わることが治療の基本となります。サポーターやテーピングが効果的なこともあります。骨折の場合は、正しい位置に整復してから固定処置を行います。

薬物治療

鎮痛剤や貼り薬などを処方して症状を落ち着かせます。場合によっては、ステロイド注射なども行います。

物理療法

超音波療法を活用して深部の炎症を解消させ、痛みを取り除いていきます。

正しい動作指導

普段の動作によって痛みや変形が起こった場合は、負担を減らすため、動作の改善を行っていきます。国家資格を有している理学療法士が、日常生活の中で無理なくできるちょっとした工夫から、生活習慣の改善方法、痛みを繰り返さないための動かし方などについて分かりやすく丁寧に指導していきます。

手に異常を感じたらまずは
安静を図ることが大切です

手は身体の中でも、酷使されている部位ですので、異常が生じると、日常生活に不自由を感じやすい部位です。手首や指の動きに違和感を覚えた時は、まず受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
治療では安静加療が重要ですが、機能回復のためにリハビリテーションを行うこともあります。